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【肺がん】基礎研究

肺がん
 分子生物学の急速な発展により、腺癌や扁平上皮癌という組織学的な分類以外に、がんを支配している原因遺伝子(Oncogenic driver mutations)が次々と明らかになり、原因遺伝子などに基づいた治療(Precision medicine)が重要になってきています。また、私たちがもともと持っているがんに対する免疫の働きを高める免疫チェックポイント阻害薬などの癌免疫療法(Immuno-oncology)が開発され、肺がんに対する治療は飛躍的に進歩しています。
 肺がんグループは、分子生物学や免疫学的手法を用いて肺がんの治癒を目標に研究を行っています。このページでは現在行われている研究の一部をご紹介します。

 

患者検体から樹立した細胞株を用いた研究

肺癌の一部は種々のドライバー遺伝子変異が原因となっており、その一つとしてEML4-ALK融合遺伝子が知られています。EML4-ALK融合遺伝子は2008年に発見され、本邦の肺腺癌の3-5%を占めるとされています。私たちの教室では、臨床系教室の強みを生かして、実際の患者検体を用いたトランスレーショナルリサーチに日夜取り組んでいます。当教室では種々の患者検体由来のサンプル(組織や胸水など)から初代培養を通じて細胞株の樹立を行っています。実例として、ROS1転座肺癌のキードラッグであるクリゾチニブに耐性となった細胞株を解析し、EGFR活性に加えてAXL高発現を見出しました。また、新規薬剤であるカボザンチニブを含む治療が耐性克服できる可能性があることを示しました。

また、第3世代EGFR-TKIに耐性となったEGFR変異肺癌細胞株を解析し、NRAS増幅を見出しました。実臨床においてキードラッグであるオシメルチニブ耐性細胞株においても同様にNRAS増幅を認め、MEK阻害剤の上乗せが耐性克服できることを解明しました。

 

遺伝子改変動物モデルを用いた研究
 私たちは、マウス肺の2型肺胞上皮細胞にEGFR変異を発現させることで、EGFRシグナルに依存した肺腺がんが自然に発生するマウスモデルを樹立しました(Ohashi et al, Cancer Sci 2008. Ohashi et al, Cancer Res 2009.)。自然発生するモデルは、世界で私たちだけが保有しています。現在我々はこのモデルを用いて、EGFR変異肺がんが腫瘍免疫から逃れているメカニズムの解明とそれを克服する新規治療法の開発を進めています。

 肺がんグループではこちらでご紹介した以外にも多数の研究を行い、積極的に世界に向けて発信しています。肺がんは残念ながら未だに日本で最も多くの方がなくなるがんで、まだまだ多くの研究が必要とされています。ぜひ一緒に研究をしてみたいと思われた方はいつでもご連絡下さい。

 


研究室での細胞培養

海外学会(2016 ASCO in Chicago)での発表