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免疫細胞治療

 がんの治療法というと思い浮かぶのは、手術、抗がん剤、放射線。これらの治療法に加え、今、「細胞療法」が注目を浴びています。細胞療法と言うと、障害を受けた組織を修復する再生医療が頭に浮かぶと思います。虚血性心疾患による心不全に対する骨格筋由来細胞シート(ハートシート®)、重症熱傷に用いられる表皮由来細胞シート(ジェイス®)、外傷性脊髄損傷に対して用いられる骨髄由来間葉系幹細胞(ステミラック®)など、2015年以降各分野での再生医療等製品が次々と臨床現場に登場しています。血液内科の分野では、造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病(GVHD)に対して使用されるヒト骨髄由来間葉系幹細胞(テムセル®)もその一つです。

 さらに近年、「細胞」の持つ「免疫力」を利用した「免疫細胞療法」が注目を浴びています。本治療により、既存の治療では十分な効果が得られなかった白血病やリンパ腫の患者さんの一部に対して劇的な効果が報告されています。特にキメラ抗原受容体導入T細胞 (CAR-T) 療法は、その劇的な効果により大きな話題となっています。本邦においても、CD19を標的抗原としたCAR-T療法(キムリア®)が2019年3月に承認され、まさに臨床現場に登場しようとしています。今後、「免疫細胞療法」はさらに開発が進み、様々な種類の腫瘍に対して臨床応用されることが予想されます。

 しかし、このような治療はどこでも行うことができるというわけではありません。「免疫細胞療法」を実施する上で最も重要なことは、この新しい治療を「安全に」患者さんに受けて頂くことですが、それが可能なのは、「免疫細胞療法」の元祖である「造血幹細胞移植」における豊富な経験を持つスタッフ、体制、設備を有する施設に限られます。岡山大学病院血液腫瘍内科は、常に最新の医療を患者さんに届けることができるよう、このような体制が整備されています。

 岡山大学病院は、厚生労働省の認定する全国9施設の「造血幹細胞移植拠点病院」の一つに認定されており(http://www.hsc.okayama-u.ac.jp/zouketsu/)、1995年から開始した同種移植症例は600例を越えています。14床の無菌室を有する移植病棟(BCR)で、医師、看護師、歯科医師、理学療法士、臨床検査技師、管理栄養士、臨床工学士などの多職種が一つのチームとなって患者さんの治療にあたっています。また、原材料となる細胞の採取(アフェレーシス)、凍結保存、保管管理を行う体制は「免疫細胞療法」を実施する上で必須となりますが、岡山大学病院においては、その部分を一元的に輸血部が担っています。現在5名在籍する輸血部のスタッフはすべて移植臨床の経験を有する第2内科の医師であり、チームの一員として円滑な協力体制の下、移植療法、免疫細胞療法を実施しています。

 是非、我々と一緒に新しい治療で患者さんを治す喜びを共有しましょう。