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【良性肺疾患グループ】基礎研究―COPD―
2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)モデル
COPDは非可逆的な気流閉塞に特徴づけられる呼吸器疾患で,原因として喫煙,大気汚染などが指摘されています。我が国において約530万人が罹患していると推計されており(2001年,NICE study),2017年には年間18,523人が命を落としています。禁煙,抗コリン薬に代表される気管支拡張薬,リハビリテーションなどで治療しますが,根治的な治療法は確立しておらず,一度破壊された肺胞構造を元に戻すことはできません。また禁煙後も肺胞構造の破壊が進行していくことが報告されており,未解明の部分がいまだ多い疾患です。
COPDにおける気道炎症の存在に注目が集まっており,当グループでは大きく分けて以下の2種類の動物モデルを用いて研究しています。
・エラスターゼモデル
マウスなどに豚膵エラスターゼであるPPE(porcine pancreatic peptide: PPE)を経気管的に投与することにより作製します。1回のPPE投与後3週間で強い気腫化が誘導されます。私たちは主にこのモデルを用いることにより,これまでにIL-17やIL-23,終末糖化産物受容体(receptor of advanced glycation end product: RAGE)がCOPDにおける気道炎症や気腫化の機序に重要な役割を果たしていることや抗体治療として臨床応用の可能性を報告しています[15-17]。
・タバコ抽出液(cigarette smoke extract:CSE)モデル
我が国においてCOPD発症の一番の原因とされるのは喫煙ですが,近年タバコを用いたCOPDモデルが数多くの研究グループにより作製されています。当グループではタバコ抽出液をマウスに腹腔内投与することによりCOPDモデルを作成しています。2019年には上述のRXRパーシャルアゴニストであるNet-4IB投与によりCSEによって誘導される気腫化が抑制されること,上述のエラスターゼモデルで気道炎症が抑制されることを報告しました[18]。
<発表論文>
[1] Am J Respir Crit Care Med. 2001,15;164:2229-38
[2] J Immunol.2002,15;169:4190-7
[3] J Immunol.2004,172:2549-58
[4] Nature Med.2004,10:865-9
[5] Allergy. 2007,62:415-22
[6] Int Arch Allergy Immunol 2008,145: 324-39
[7] Am J Respir Cell Mol Biol. 2009,40:672-82
[8] Am J Respir Cell Mol Biol 2011,45:851-7
[9] Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015,309: L789-800
[10] Respir Res 2017,18:23
[11] Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2019,316:L407-17
[12] Am J Respir Cell Mol Biol 2006,35:366-77
[13] Am J Respir Cell Mol Biol 2005,32:268-80
[14] Am J Respir Cell Mol Biol 2014;50:18-29
[15] Respir Res 2013,20;14:5
[16] Am J Respir Cell Mol Biol 2015,52:482-91
[17] Am J Respir Cell Mol Biol 2016,55:697-707
[18] Respir Res 2019;20:2