【肺癌】基礎研究

肺がん
 分子生物学の急速な発展により、肺癌がどうして起きるのか?何が原因なのか??ということが解明されつつあり、腺がんや扁平上皮癌という組織学的な分類以外に、がんを支配している原因遺伝子(Oncogenic driver mutations)による分類が重要になってきている。
 臨床腫瘍グループは、肺癌の治癒あるいは進行がんを慢性疾患のように長期にコントロールできる治療法の開発を目標に研究を行っている。

A.上皮成長因子受容体(Epidermal growth factor receptor: EGFR)変異を有する肺がん
i) 細胞株モデル
 EGFR変異を有する肺がんは、日本人の非喫煙者に発生する肺がんの半数以上を占める。ゲフィチニブやエルロチニブなどのEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は、直接driver mutationsを阻害することで劇的な効果を示す。しかしながら、20%程度の肺がんは初回から効果が得られない初期耐性を示し、またいったん効果を示したとしても約1年程度で効果がなくなる(獲得耐性)ため、肺癌を完全にコントロールできるとはいえない。我々は、患者から樹立されたEGFR変異を有する肺がん細胞株を用い、その耐性のメカニズムの解明およびその克服の方法を研究してきた。代表的な成果として、EGFR変異を伴うヒト肺腺がん細胞株PC-9を用い、EGFR-TKIであるイレッサの耐性株を樹立し、臨床上の耐性機序として最も高頻度なEGFR T790Mが出現するモデルを確立した(Ogino et al Cancer Res 2007)。このモデルは、世界中でEGFR-TKI獲得耐性のモデルとして幅広く利用されている。これに加え、数種類のさまざまな耐性パターンを示す細胞株を樹立している。現在までに、さまざまな耐性メカニズムが報告されているが、これら耐性を克服することのできる新規の治療法の開発につながる基礎的な検証を行っている。

ii) 遺伝子改変動物モデル
 我々は、マウス肺の2型肺胞上皮にEGFR変異を発現させることで、EGFRシグナルに依存した肺腺がんが自然に発生するマウスモデルを樹立していた。自然発生するモデルは、世界で我々だけが保有している。このマウスモデルで、EGFR経路に対する分子標的薬の効果のスクリーングを行っている。また肺癌に存在が示唆されている癌幹細胞を、このマウスモデルより取り出すことを試みている。

B. その他のOncogenic driver mutationsを有する肺がん
 EGFR以外にも種々のOncogenic driver mutationsが確認され、それらに対応した分子標的薬の開発も進んでいる。細胞株モデルを用いて、最適な分子標的治療薬の投与方法およびその耐性の機序につき研究を行っている。

 i) ALK遺伝子転座を有する肺がん
 ii) ROS1遺伝子転座を有する肺がん
 iii) HER2遺伝子変異を有する肺がん
 iv) BRAF遺伝子変異を有する肺がん

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